| 作者 / written by | Sam Esmail |
|---|---|
| Director | Sam Esmail |
| Starred | Rami Malek, Christian Slater, BD Wong |
| リリース年 / year | 2015 |
| Production Company | Universal Content Productions, Anonymous Content |
| Technical Advisor, Consultant | Michael Bazzell, Kor Adana |
作品レビュー
2010年代を代表するCyber Crime Drama。主演のRami Malekの名を世に知らしめ所謂”ハッカー”のiconをV for Vendetta (Vフォーヴェンデッタ)から刷新した記念碑的作品。
サイバークライムムービーを考える上での一つの基準とも言える(なんかあつい)
techno thriller (テクノ・スリラー)と製作者側でジャンルを定義しているが、CCMR的には21世紀のファイトクラブと呼ぶべき快作でつまりmust-see = 必見。
(ファイトクラブ見てませんよ、という方も多そうですが…)
全4シーズン、45エピソードある人気作
Total : 22/25
- drive the story, involvement / penetration : 5 セキュリティエンジニア(ハッカー)の設定と描写が添え物でなく物語と強く結びついている
- technical breakthrough, fresh ideas / hack : 5 hackingからつなげられる映画的な物語展開として展開していっておりgood job
- hacker description / report : 5 David Fincher的なものとは違う新しいhacker像、White Roseも秀逸
- gadgets / artifacts : 3 基本はPCだけで会話と心理劇がメイン
- other cinematic techniques / misc : 4 精神不安定な主人公の心理を反映した暗く色味の少ない揺れる画面、自分に問いかけ続けるセリフ回し
Elliot (エリオット)はAllsafe Cybersecurity社のセキュリティエンジニアであり、セキュリティの自警団的ハッカー(vigilante hacker)であり、ドラッグ依存症。
企業で働くも社会に馴染むのはギリギリの不適合者感がある好感の持てる?ハッカータイプだか腕は抜群。物語はElliotのメンタルと彼が働く会社が抱える問題、そして登場する謎の男Mr. Robotとが絡みながら進んでいく。
物語の主軸はSeason 1を見て駆け抜けていただきたいが配信から消えつつある(投稿当時だとHuluくらい)ので、機会を得て見てほしい。ただ、我々サイバークライムのリサーチャーとしてはこのドラマが切り開いたハッカー像に注目したい。
天才ハッカーの描き方
サイバークライム映画(ドラマ)史は天才ハッカーの描き方の歴史でもある。このテーマだけで何個か記事をかけるくらいだが、いわゆる天才的な頭脳を持つアウトローはしばしば映画の主人公になってきた。そしてその演出には王道がある。
- Catch Me If You CanのFrank Abagnale (L. ディカプリオが演じた役)
- The Social NetworkのMark Zuckerberg
- The Girl with Dragon Tattoo (ドラゴン・タトゥーの女)のLisbeth (リスベット)
最初のスピルバーグ作品は典型的な傲慢な天才(詐欺師)を描いているが、この形がベースとなり、サイバーな詐欺師やハッカーの描写につながっていく。
『ソーシャルネットワーク』と『ドラゴン・タトゥーの女』はともにDavid Fincherが監督だが、ここでフィンチャーは天才ハッカー = 早口でまくし立てるソシオパスという演出を確立した。
2015年のMr. Robotはこれらの上に成り立っておりElliotの描写もこれに近いものがある。頭の回転が早すぎて早口になり、会話する相手の期待する内容を答えない、惑わす、等々…。
でも、画期的なのはWhite Rose (ホワイトローズ)だ。
まずはこのシーンを見ていただきたい。
Mr. Robotにおけるハッカー像はパラノイア(Paranoia = 偏執狂)で、それぞれのキャラクターが何かに取り憑かれている。Elliotが対峙する謎めいたsuper hackerであるWhite Roseは時間に執着している。とかく頭の回転で頭脳の良さを語ろうとしがちな演出に対し、本作ではElliotとWhite Roseの”間” (主人公の方は呆然としている感じだが)が採用され、この物語のトーン強化に役立っている。
“Every hacker has a fixation. You had people I hack time.”
時間への執着を焦りや不安ではなく、揺らぎない自信や軸のブレなさと結びつけることでWhite Roseは登場の瞬間から魅力に溢れ、この人物が決して相手のペースに惑わされることがなく条件が合わなければ交渉は時間切れで終わることが示唆される。
ゾクゾクするような演出だが、これがリアルなサイバー犯罪者ということではないだろう。映画的に面白いという点で秀逸。白人男性でもゴス女性でもないこの造形のオリジナリティがMr. Robotを一つ上のレベルに引き上げているのは間違いない。
そのhackはリアルか? 物語の結末とテクニカルアドバイザーについて
Season 1の結末は物語の根幹に関わるネタバレになるのでそのまま書けないが、先にストーリーを進めていくhackingの手口について少し。
Mr. Robotの技術的な部分、つまりhackingやcyber securityに関わる点は元FBIのテクニカルアドバイザー Michael Bazzellがインタビューに答えている。
Bazzell氏はFBIでサイバー犯罪調査に従事した後、Mr. Robotのテクニカルアドバイザーとしていわゆるhackingなどの技術的なシーンづくりに携わったとのことで、最も苦労した部分は「時間」と答えている。実際サイバー犯罪や侵入には長い準備期間や手間がかかるのをドラマのシーンでは一瞬で描く。実際には数時間かかるhackの描写に数秒しか与えられなかったこともあったようで、時間についてはfudge(ごまかす)しかなかったと語っている。
サイバークライム映画の急所である時間についてはBazzell氏の言う通りだろう。しばしば秒で”ハックしました”と出てくるのを非難しつつも、完全にリアルなまま描かれると退屈すぎるのがサイバー犯罪・サイバー攻撃というのも事実。ギリギリまああり得るかなという範囲でドラマティックに描けるかどうかが製作者側の腕の見せどころであり、それはまさにフィクションである映画をつくるという行為そのものである。
さて、物語はファイトクラブ的な展開によって結末を迎えることになるが、1999年のFight Clubが現代社会において去勢された男たちが生を取り戻す様子を描いたのに対し、Mr. Robotは世界が変動を起こしつつもその中で戦慄し翻弄されるElliotを描き続けカタルシスなくシーズンの終わりを迎えていく。次シーズンに続くドラマ的とも言えるが、生々しさが残るendingだ。世界は自分の手に負えない、とでもいうかのRami Malekの表情が配信サービスのディスプレイに投影され、見終わった僕らはため息をつくしかない。
傑作ってやつですね。

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